婚活・恋愛

婚活アプリで出会った、忘れられない人のこと。

婚活アプリで出会った、忘れられない人のこと。

婚活アプリを使っていると、会った人の顔や名前が少しずつ混ざり始める。

2回目のデートの相手が誰だったか、最初に「いいね」してきた人が何を話していたか——記憶が薄れていくのが当然になってくる。だから逆に、1年以上経った今でも時々思い出す人がいる、ということが不思議でしかたない。

この記事は、うまくいかなかったけど、何かを残してくれた出会いの話。

01

プロフィールが、他の人と違った

Pairsで彼のプロフィールを見た時、最初に思ったのは「この人、ちゃんと書いてる」だった。

婚活アプリのプロフィールは、正直どれも似たり寄ったりになりがちだ。「仕事が好きです、休日は映画、料理もします、穏やかな家庭を築きたいです」——そういう文章が並ぶ中、彼の自己紹介にはこんなことが書いてあった。

「昔は仕事を言い訳にして、大切なことを後回しにしすぎていました。それで失ったものがあります。今は、ちゃんと向き合いたい人と一緒にいたいと思っています」

何かを失った、と書ける人が婚活アプリにいるとは思っていなかった。すごく正直な文章だと感じて、気がついたら「いいね」を押していた。

02

メッセージが、会話だった

マッチングしてからのメッセージのやりとりが、今まで経験したことのない感じだった。

多くの人は「休日は何をされていますか」「好きな食べ物は?」と聞いてくる。悪いわけじゃないが、インタビューみたいで少し疲れる。でも彼は違った。

私がプロフィールに書いていた「一人で美術館に行くのが好き」という一文を拾って、「最近行って印象に残っているのはどこですか。私は去年、偶然入った小さな個人ギャラリーで、作家本人と話せた時間が忘れられなくて」と返してきた。

私はそのメッセージを2回読んだ。「会いたい」と思ったのは、それが初めてだった。

03

初デート、2時間があっという間だった

待ち合わせは、彼が選んだ駅近の静かなカフェだった。席についてから気づいたのは、彼が私の話を聞く時、スマホを一切触らなかったということ。

当たり前のことかもしれないが、婚活のデートでそれをされると、妙に緊張する。「ちゃんと聞かれている」という感覚が久しぶりすぎて、どこか落ち着かなかった。

仕事のこと、地元を離れた理由、好きな季節、読んだ本——話題が自然に流れて、2時間があっという間だった。帰り際、「また会えますか」と言われた。「はい」と答えた自分の声が、少し弾んでいた。

04

2回目のデートの帰り、彼が言ったこと

2回目も楽しかった。夜ごはんを食べて、少し歩いて、また話しすぎるくらい話した。

駅で別れる前、彼が少し真剣な顔になった。

「正直に話しておきたいことがある。2年前に離婚していて、まだ自分の中で整理しきれていない部分があります。あなたと会うのはすごく楽しいし、また会いたいと思っている。でも、今の自分があなたに向き合いきれるかどうか、自信がない」

その場で何を答えたか、正確には覚えていない。「話してくれてありがとうございます」と言ったと思う。電車に乗って、窓の外を流れる夜の景色を見ながら、なぜか泣きそうになっていた。

05

その後、連絡は少しずつ減っていった

3回目のデートはなかった。

メッセージは続いた。でも少しずつ間隔が開いていって、ある時から私も返事をするのをやめた。どちらからともなく、自然に終わった。

終わらせたことに後悔はなかった。ただ、なんとも言いがたい気持ちが残った。嫌いになったわけではない。むしろ、いい人だと思っていた。それでも続かなかった、という事実の置き場所が、しばらく見つからなかった。

「タイミングが違った」という言葉は便利すぎて使いたくなかったが、結局それ以外の言葉が見つからなかった。

06

今でも時々、思い出す

美術館に一人で行った帰り、カフェで本を読んでいる時、誰かとメッセージをやりとりしている時——ふと彼のことを思い出す瞬間がある。

懐かしいというより、「そういう人がいたな」という、澄んだ感じの記憶だ。悲しくはないが、少しだけ温度のある何か。

彼が教えてくれたことがあるとしたら、「ちゃんと話を聞いてもらえると、自分がほぐれる」という感覚だと思う。それまで、婚活のデートで緊張を解いたことがほとんどなかった。でもあのカフェで、久しぶりに「ああ、私はこういう会話がしたかったんだ」と思えた。

うまくいかなかった出会いの全部が無駄だとは思わない。何かを残してくれる人は、いる。

結果じゃなくて、感覚を残してくれる出会いがある

婚活は「成功か失敗か」で語られがちだけど、そうじゃない出会いもあると思っている。何も変わらなかったように見えて、自分の中の何かが少し動いた——そういう時間が、婚活を続ける理由になることもある。

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